王国―その1 アンドロメダ・ハイツ―
よしもと ばなな(著)
 ペンネームを「吉本ばなな」から「よしもとばなな」に変えてからの第一弾書き下ろし作品。
 主人公雫石(しずくいし)は山の中で薬草茶を作る祖母と、彼女のアシスタントのようなことをしながら暮らしていた。しかし、山のふもとの開発のせいで大好きだった山を降り、祖母と分かれて東京に暮らすようになる。そして雫石が住む町の、いんちきじゃなく本当に不思議な力を持った占い師・楓の元で、アシスタントの仕事を始めるのだった。
 最近はとんと御無沙汰だった、初期の頃の作品のような不思議な雰囲気が美しく描かれている。私の生活の中では起こらない(でも起こりえる)出来事や、不思議な能力を持った人達。雫石が魂とか本能のような一番無垢なところで感じている感覚。私は昔から、この人の小説を読むと手のひらにきらきら光る「何か」を乗せられたような、身体のどっかが浄化されたような気分になる。自分の一番きれいな部分で物語を感じ取っているような、そんな気がするのだ。
 しばらく旅エッセイ物が続いていて(それでもあの美しい文章は健在だった)ちょっと寂しかったが、初期の作品が好きな人にはオススメの一冊。物と情報まみれの世界で、成長とともに剥がれ落ちていったものを大事に大事に描いた、ちょっと疲れた心に染み渡る水のような作品。(朝)