溺レる
川上 弘美(著)
 タイトルの送り仮名が一つカタカナになっておりますが、このタイトルが全てを表しているように思います。そこから醸し出されるなんとも言えないレトロで退廃的な雰囲気、それこそがこの作品の持つ世界ではないでしょうか。全八編からなる短編集でして、好きな男性との話を女性の視点から書かれたものになっています。しかしどの話も爽やかにさらりと読める話は一つとしてありません。。。
 駄目な男と手に手を取り合って逃げる「溺レる」、好きな男と心中をするも失敗し、自分だけ死んでしまう「百年」、などなどどれも粘りのある(?)男と女の関係を描いています。しかもどの話も女性がその恋愛にかなり没頭しているのが特徴かもしれません。
  蒸発だ、心中だと内容が多少重いように感じながらも、短編であるということに加え、その独特の文学的文体から重たくならずに最後まで読むことができます。以前芥川賞候補にも上がったという著者ですが、短編一つ一つに非常に文学的なものを感じます。久しぶりに文学を読みたい!という方にオススメいたします。(素)